大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1750号 判決 1949年12月22日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人武山武夫、同飯田金昭、同大友敬一弁護人菊地養之輔上告趣意第一点乃至第三点について。

原判決の判示は、所論摘示のとおりである。されば、原判決は、窃盗共謀の事実を判示しているのみならず、犯罪の日時、場所並びに被害物件の保管者及び所有者が被告人等以外の他人であること等を特定し得る程度に具体的に判示しているものといわねばならぬ。そして、犯罪の日時、場所は罪となるべき事実ではないから、原判示のごとく犯行の同一性を特定し、相当法條を適用し得る程度の判示あれば足りるものであるこというまでもない。また、共謀の日時、場所はこれを判示する必要のないものであるから、原判決が判示のごとく共謀したと判示した以上判示に欠くるところはない。また、判示のように「国鉄当局係員の保管に係る列車の積荷」と判示した以上被害物件の保管者並びに所有者が被告人及び共犯者以外の「他人」であることまことに明白であるから、窃盗罪の客体の判示として欠くるところはない。それ故に、所論第一乃至第三点は採ることができない。

同第四点について。

原判決が判示第十一事実として所論摘示のように判示したことは、所論のとおりである。しかし、同判示就中「突落し以て窃取し」との判示とその挙示の証拠殊に原審公判廷における被告人大友敬一の突落した後同被告人等両名は間もなく突落した現場に行き品物を大友の家に持ち帰った旨の供述とを対照すれば、原判示は、積荷を列車外に突落し拾う計画を実行して拾った趣旨をも含むものと解することができる。しかのみならず、鉄道線路の地理現場の事情に精通していると認められる鉄道機関助士である被告人等が判示のごとく共謀計画して判示のごとく定められた目的の地点で積荷を列車外に突落した本件においては、特別の事情の認められない限り、その目的の地点に積荷を突落したときその物件は他人の支配を脱して被告人等共謀者の実力支配内に置かれたものと見ることができる。されば、原判決の窃盗既遂の判示は違法なものとして原判決を破棄しなければならない欠点があるものとはいえない。それ故、所論は、結局採ることはできない。

被告人大友敬一弁護人菊地養之助追加上告趣意第五点について。

しかし、原判決は、被告人大友敬一の原審公判廷における判示同趣旨の供述の外檢事の山元巳佐男に対する訊問調書中判示の日時、場所等と異る部分を除いた同人の窃盗に関する供述記載及び同人に対する逮捕状中の記載(両者の間に所論の矛盾を認めないように解し得られる)を補強証拠として認定した趣旨であること明白であるから、原判決にはすべて所論の違法はない。論旨は、それ故に、採ることはできない。

被告人千葉春雄弁護人保田久夫の上告趣意について。

所論は、要するに被告人春雄に対する刑の量定重きに失し妥当でないというのであるから、上告適法の理由として採ることができない。

同被告人弁護人滝川三郎上告趣意第一点乃至第三点について。

しかし、犯罪の日時は、法律上別段の定めのない限り、旧刑訴三六〇條にいわゆる罪となるべき事実ではないから、必ずしも証拠によって、これを認めた理由を示す必要はなく、犯行の同一性を特定し、相当法條を適用し得る程度に判示し、一件記録上これを認めるに足る証拠あるを以て足りるものである。そして、所論原判決摘示の日時については、原審における相被告人千葉義照の冒頭における供述により、これを認めるに難くないから所論第一乃至第三点は、すべて採ることができない。

同第四点について。

しかし、共同被告人の供述は、互にいわゆる補強証拠たり得るのであるから、所論第三及び第六の事実について原判決は、被告人千葉春雄の原審における供述のみを唯一の証拠としてこれを認定したものではない。されば、所論は既にその前提において採ることができない。

よって旧刑訴四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例